今回は、中小企業診断士への道の第3弾として、
経営計画についてまとめてみたいと思います。

経営計画

経営計画とは

経営計画とは、経営目標を達成するための方策と具体的行動予定を決定することです。

ではなぜ具体的行動予定を立てるのかですが、
日々の仕事に追われ、成り行きにまかせて事業を営んでいては、将来にわたって良い成果を生むことはできない為です。

成り行きにまかせて事業を営んでいては、
せっかくのビジネスチャンスをものにできないばかりか、急速に変化する経営環境に適応できず、自社の存続さえ危うくなりかねません。

だからこそ、目標を具体化し計画にまで落とし込むことが大切で、
一般的には、「誰が(Who)、いつまでに(When)、何を(What)、どのように行うのか(How)」という「3W1H」の項目で経営計画は整理します。

経営ビジョン

経営ビジョンとは、経営理念に基づいて示される会社の具体的な将来像のことで、
経営理念と並んで、経営戦略を計画する上で重要な前提となります。

登山を例に例えると、

・どの山に登るかを決める → 「ビジネス・ドメイン」の選定(自分たちがどの分野で企業活動を行うのかを決める)
・目指す山の頂上から見える景色 → 「経営ビジョン」(こんな景色を見るために頑張ろうと意識を一つにする)

となります。

また経営理念との違いは、

・経営理念 → 企業の存在意義や大事にする価値観、経営姿勢、社会的責任などを内外に示すもの(創業者・経営者の強い思いが込められる)
※「この会社はどんな社会的役割を果たしているのか、どんな点で社会になくてはならないか」などを文章で表したもの

・経営ビジョン → 経営理念を実現するために描く企業の将来像(経営理念に沿って、将来の目指す姿を定め、従業員や顧客、株主、社会などに示すもの)
※経営ビジョンは経営者の夢にあたるもので、経営者にとっても、ビジョンを共有する従業員にとっても、「ワクワク」するものである必要がある

経営計画の役割

1. 経営の道しるべになる

経営計画を作成することによって、経営の方向性が明確になるため、将来の意思決定や経営資源の配分を適切に行うことができるようになる

2. 経営活動を合理的に展開できる

経営計画を作成することによって、経営の方向性が明確になるため、経営活動を合理的に展開することができる

3. 従業員の経営参加意識を高める

経営計画を経営陣と従業員が一緒になって作成することで、従業員の経営参加意識が高まる

4. 全社・部門の目標・方針を正確に従業員に伝えることができる

経営計画によって、全社・部門の目標・方針を従業員に正確に伝えることができる

経営計画の策定ステップ

1. 経営理念、経営方針の明確化

経営理念を明らかにし、「何のために経営するのか」を明文化し、これを事業と結びつけて、事業の運営方針まで定める。これが「経営方針」であり、経営理念をもとに「自社がどのように事業を運営していくか」を示したものである

2. 経営力の分析

経営力を正しく判断するためには、「経営活動からの分析」、「決算書を基にした経営諸比率からの分析」に取り組むと良い。経営活動の分析項目としては業種分野、販売力、生産力、組織編成、組織風土、および経営者層のリーダーシップなどが挙げられる(3C分析、SWOT分析、PPM-プロダクトポートフォリオマネジメント、バリューチェーン)

3. 環境変化の予測

環境変化には社会環境と自社を取りまく直接的な環境とがあり、環境変化の主な要因もまとめておく(PEST分析、ファイブフォース)

4. 中長期目標の設定

「自社がどのような分野に進んでいくのか」や、「どのような商品を扱っていくのか」などを視点に目標を設定する。(現在の事業を継続するのか?それとも事業の幅を広げるのか?市場は同じでも商品を充実させるのか?新しい事業分野に進出するのか?など)

5. 次年度マスタープランの策定

マスタープランの作成は「翌年度重点方針の決定」、「商品、市場別の計画の設定」、「開発投資計画の策定」 、「売上利益計画の骨子策定」の順で進めると良い

6. 次年度部門計画の立案

部門計画は「各部門へのマスタープランの提示」、「部門方針と部門予算骨子の作成」、「部門メンバーによる方針の確認」、「全体計画と部門計画の調整」、「個人目標の設定」の手順でまとめる

7. 全体計画と部門計画の調整

部門から積み上げられてきた予算と全体の売上利益計画マスタープランを比較検討してそのギャップを明らかにする(部門予算とのギャップの原因や予算の妥当性を判断し、全体予算と部門予算の調整、あるいは部門間の予算の調整を行なう)
※互いが納得し実現可能な計画となるように具体的な根拠をもって調整を行なうようにしなければならない

8. 計画書の作成と発表会の準備

ここまでで立案した計画を計画書に落とし込み、実際の発表に向けての準備を進めます。
全社員に理解・納得してもらえる発表でなければ意味がないので、グラフやデータの見せ方などの細部にまで気をつけて資料は作成しなければいけません。

9. 計画の発表

最後に経営計画を発表します。スライドショーや動画など、様々な工夫を施し計画を発表します。
計画発表後、全員が「よし、やるぞ!」といったモチベーションになっている必要があるので、話し方や伝える言葉は、その場の空気に合わせて調整する必要があります。

*1 環境変化(自社を取りまく直接的な環境)

・仕入れ先の商品、原材料の動向
・得意先の戦略
・顧客のニーズ
・新設備の開発動向
・販売チャネルの変化
・技術開発の動向
・同業他社の動向

*2 社会環境

・社会、政治、経済(好・不況、出生率の低下など)
・技術(新素材、バイオテクノロジー、コンピューター化など)
・消費者価値観(価値観の多様化、豊かさの追求、余暇の充実など)
・法改正(規制緩和、税制改正など)
・金融(円相場、金利、株価など)
・労働(賃金水準、採用状況、福利厚生の社会動向など)

*3 翌年度重点方針の決定

中長期目標を実現するために「翌年度は何に重点的に取り組むべきか」をまとめる。
このとき、今年度の計画のなかで実行できなかった点など課題を洗い出し、現状に則した目標となるよう心がける。
※できるだけ具体的に設定し、1年後自社がどのようになっているのかがイメージできるようにすることがポイント

*4 商品、市場別の計画の設定

自社がターゲットとしている顧客の分類を見直し、さらに商品の品揃え計画を立てる。
自社の顧客別売上構成や利益状況を分析して、これから売上の拡大が見込まれる顧客、縮小が見込まれる顧客などを把握し、今後の営業政策に適した顧客分類を行なう

*5 開発投資計画の策定

投資は将来の事業発展に大きな影響を与えるものであり、また多大な資金を必要とすることから、慎重に計画を立てなければならない。
計画を立てる際は、設備投資と人材開発投資と研究開発投資とを別項目として検討する。

*6 売上利益計画の骨子策定

この段階における利益計画は、各部門の立てる部門計画の指針となるものなので詳細にわたる必要はなく、概算で示す。
まずは、前年度の実績利益を参考に来年度の目標からみた売上を予測し、目標利益を設定する。

期間別経営計画

1. 長期経営計画

一般的に、長期経営計画の対象期間は5~10年くらいですが、場合によっては10年以上先を見据えたものもあります。
長期経営計画は、企業理念や経営ビジョン実現のために設定される計画で、企業の経営戦略を具体化するものであり、ドメインの方向付けとなるなど、企業経営に影響を与える重要な計画です。

2. 中期経営計画

中期経営計画は、長期経営計画に基づき作成され、さらに具体化した3~5年程度の期間で実行する計画です。
ここでは、売上高等の具体的な目標値を設定し、その目標値に向かって、短期経営計画でさらに具体化されていきます。

3. 短期経営計画

短期経営計画とは、計画期間が1年以内、もしくは半年等の短期間に実行されるための計画で、中期経営計画の実現に向けて具体的かつ詳細に設定されるものです。

経営計画の策定・管理技法

ABM(Activity Based Management:活動基準原価管理)

ABMは、ABC(Activity Based Costing:活動基準原価計算)の考え方を経営管理に利用した考え方です。
ABCによって活動ごとに把握された原価情報などを活用し、コストの視点から活動の管理に原点を置く技法のことを言います。

DCF(Discount Cash Flow)法

DCF法(割引キャッシュフロー法)は、将来にわたるキャッシュフローを現在価値に割り引いて評価する方法です。

ガントチャート

ガントチャートとは、工程の計画と統制のための図表で、横軸に時間(週、日数など)をとり、縦軸に作業項目をとったものです。
通常、計画と実績を対比して示します。

PERT図

PERTは、プロジェクトを合理的、効率的に遂行するためのスケジューリング手法です。

線形計画法

線形計画法は、いろんな制約条件がある中で、いかに最大限の効果を出すかを考えるための方法です。
目的関数と制約条件を数式で表し、その条件下で目的関数を最大化(または最小化)する解を求めます。

*7 ABC(Activity Based Costing:活動基準原価計算)

ABCとは、Activity-Based Costingの略で、活動基準原価計算のことです。どの製品やサービスのために発生したのかがわかりにくい間接費を、それぞれの製品やサービスのコストとしてできるだけ正確に配賦することによって、生産や販売活動などのコストを正確に把握していこうという考え方で、製品の製造や商品の販売に消費された原価(費用)を計算する、原価計算の手法の1つです。

経営計画の修正

一度作成された経営計画は、必要に応じて修正しなければいけません。

コンティンジェンシー・プラン

コンティンジェンシー・プランとは、環境の変化に的確・迅速に対応できるように、起こる確率が比較的高く、業績に対する影響が大きい不測の事象をあらかじめ想定しておき、それに対処する計画を立てておくものです。
不測の事象としては、円高や円安など為替の急激な変動、原油やレアアースなどの生産活動に不可欠な資源の輸入の停止、原油価格をはじめとした原材料価格の高騰、海外投資先の政変・治安の悪化・ストライキの頻発などが考えられます。

コンティンジェンシー・プランのメリット

突然の環境変化に対しても迅速に対応可能となる。

コンティンジェンシー・プランのデメリット

あらかじめ計画を作成する為、情報収集や分析能力を強化する必要があり、コスト・稼働などの負担が大きい。

ローリング・プラン

ローリング・プランとは、経営計画の運用の一つで、環境変化に対応するために定期的に当初設定した経営計画を見直し、環境変化に適応した手直しや修正を加えていく手法です。
元の計画を100%変えてしまうのではなく、環境変化に適応できない部分にだけ修正を加えます。

コンティンジェンシープランの場合は、環境変化に伴って、すでに策定してある別の計画に乗り換えていきますが、ローリング・プランの場合は、元々の計画を環境に合わせて修正します。

バランス・スコアカード

バランス・スコアカードとは、経営計画を実行した際の評価指標のことを言います。4つの視点(財務の視点、業務プロセスの視点、企業成長と学習の視点、顧客の視点)から企業の業績を評価します。
従来は、財務的視点から業績を評価していましたが、財務的視点は過去の業績のみを表すため、それだけでは不十分です。企業成長と学習の視点や顧客の視点等の将来を見通した視点から業績を評価する必要があります。4つの視点を有機的に結合し、将来のあるべき姿や経営ビジョンを実変するための指標を設定します。

バランススコアカードの例
  1. 財務の視点
    戦略目標の例:収益拡大、売上増大、株価向上
    評価指標の例:株価、ROE *8 ・ROI 9 、CF *10 ・EVA *11 等
    具体策の例:遊休資産の圧縮・処分、ディスクロージャー *12

2. 業務プロセスの視点
 戦略目標の例:新製品開発、品質管理の徹底、経営効率の改善
 評価指標の例:新製品数、在庫数量、不良品発生率
 具体策の例:製品改良・新用途開発、ISO * 13 の取得、TQC *14・QC *15 の導入

3. 企業成長と学習の視点
 戦略目標の例:スキルの向上、ナレッジ・マネジメント *16 、企業風土 *17 の改善
 評価指標の例:教育訓練費、データ使用率、従業員からの企画・提案の数
 具体策の例:社内研修制度、グループウェア *18 の導入、社内報の充実

4. 顧客の視点
 戦略目標の例:ブランドの訴求、信頼性向上、CS向上、関係性構築
 評価指標の例:市場シェア、クレーム発生率、継続購入率、マインド・シェア *19
 具体策の例:POS・EOSの導入、顧客サービスの向上

*8 ROE

ROE(Return On Equity)とは、自己資本利益率のことで、株主が拠出した自己資本を用いて企業が株主のためにどれだけの利益をあげたか、つまり株主としての投資効率を測る指標です。

ROE(%) = 当期純利益÷自己資本×100
自己資本 = 純資産 – 新株予約権 – 少数株主持分
ROE = 売上高純利益率 × 総資本(資産)回転率 × 財務レバレッジ

*9 ROI

投資収益率 (ROI)とは、いわゆる「投資対効果」と呼ばれるやつを何となく数値で表したものであり、「投資した金額に対して、どれだけ儲かったか?」を表す指標です。
現実的には、「儲かった額 ÷ 投資した額」の計算式で求められる値で、、数値が大きければ大きいほど収益性が高い投資であると判断できます。
また、会社の資本がうまく活用されているか、ということに対して判断をする際にも活用されます。

*10 CF

CFとはキャッシュフローの略です。キャッシュフロー(CF)がいい会社は倒産しにくいので「企業の倒産リスク」を見極めるのに、役立ちます。

・CFがプラス…倒産しにくい
・CFがマイナス…倒産しやすい

▼3種類のキャッシュフロー

  1. 営業キャッシュフロー(本業の損益) → プラスが良い
  2. 投資キャッシュフロー(設備投資、株や債券の売買などによる損益) → マイナスが良い(ことの方が多い)
  3. 財務キャッシュフロー(銀行などから借りたらプラス、返済したらマイナス) → マイナスが良い(ことの方が多い)

*11 EVA

EVA(経済的付加価値、Economic Value Added)はスターン・スチュワート社の登録商標で、企業が一定期間にどれだけの価値を創造したかをみる指標です。言い換えれば、資本コスト以上の税引後営業利益を生み出しているかをみる指標とも言えます。EVAの定義は次の通りです。

・EVA
=NOPAT(税引後営業利益)-資本コスト額
=NOPAT(税引後営業利益)-投下資本✕資本コスト(率)

投下資本とは、有利子負債と株主資本(簿価)の合計です。運用サイドから言えば、固定資産と正味運転資本(流動資産-流動負債)の合計ということもできます。

▼EVAを上げる

・NOPATを高める
・投下資本を減らす
・WACCを下げる

EVA=(ROIC-WACC)✕投下資本

※経営者としては、限られた投下資本の中で、ROIC(投下資本利益率、Return on Invested Capital)とWACC(WACCとは、資本コストの代表的な計算方法で、借入にかかるコストと株式調達にかかるコストを加重平均したもの)のスプレッド(差)を最大化することが大切
※企業としてはWACCを上回る投下資本利益率(Return On Invested Capital :ROIC)をもたらす事業のみに投資をすることが重要である

*12 ディスクロージャー

ディスクロージャー(Disclosure)とは、情報開示(情報公開)のことで、多くの場合、企業が投資家や株主、債権者などに対して経営内容等を開示することを指します。
法律や取引所ルールによるものと企業が自主的に行っているものがあり、上場企業等が公表している財務諸表や有価証券報告書などは、前者のディスクロージャーのための資料に該当します。企業がIR活動の一環として自主的に行うもので、金融機関などでは、ディスクロージャー誌(紙)として経営内容等をまとめたものを、顧客に送付したり、店頭に置いたりして、誰もが気軽に確認できるようにしています。

*13 ISO

ISOとは、スイスのジュネーブに本部を置く非政府機関 International Organization for Standardization(国際標準化機構)の略称です。
ISOの主な活動は国際的に通用する規格を制定することであり、ISOが制定した規格をISO規格といいます。ISO規格は、国際的な取引をスムーズにするために、何らかの製品やサービスに関して「世界中で同じ品質、同じレベルのものを提供できるようにしましょう」という国際的な基準であり、制定や改訂は日本を含む世界165ヵ国(2014年現在)の参加国の投票によって決まります。

また製品そのものではなく、組織の品質活動や環境活動を管理するための仕組み(マネジメントシステム)についてもISO規格が制定されていて、これらは「マネジメントシステム規格」と呼ばれ、品質マネジメントシステム(ISO 9001)や環境マネジメントシステム(ISO 14001)などの規格が該当します

*14 TQC

TQC(Total Quality Control、トータル クオリティー コントロール)とは、統合的品質管理、または、全社的品質管理のことである。QC(品質管理)は主に工場などの製造部門に対して適用された品質管理の手法であるが、これを製造部門以外(設計部門、購買部門、営業部門、マーケティング部門、アフターサービス部門、etc)に適用し、体系化したものである。
TQCの最大の狙いは、ある製品を企画設計する段階から、製造販売そしてアフターサービスまでの全プロセスで総合的に品質管理を行うことである。また、企業の一部門だけが取り組むのではなく、企業全員(経営者、管理者、監督者、作業者etc)が取り組むことも大きな特徴である。

*15 QC

QC(Quality Control)とは、品質管理のことで、顧客に提供する商品およびサービスの品質を向上するための、企業の一連の活動体系のことを言います。

*16 ナレッジ・マネジメント

ナレッジマネジメントとは、企業が蓄積した知識や経験(独自の営業ノウハウや技術情報、顧客情報など)を全社的に共有し、企業が持つ競争力を活性・向上させる経営手法をいいます。

*17 企業風土

企業風土は組織風土、社風とも呼ばれ、職場でのコミュニケーションのとり方、目標に向かって仕事に取り組む姿勢、社員の士気の高さといった、人間関係を土台とした労働環境を指します。

*18 グループウェア

グループウェアとは組織の内部でのスケジュールやタスクなどの共有やコミュニケーションを目的としたソフトウェアです。 グループウェアの機能の例としては、社内SNSや電子メール、スケジュール管理、ドキュメント共有、ワークフロー、勤怠管理、テレビ会議といったものが挙げられます。

*19 マインド・シェア

マインド・シェアとは、特定のブランドまたは企業が、消費者の心の中でどの程度好ましい地位を得ているかを比率の形で示したもの。一位挙名率や純粋想起率などの知名度シェア、購入意向率やイメージ得点シェアなどが用いられる。

ベンチマーキング

経営や業務・ビジネスプロセスの非効率なぶぶんを改善するため、他分野における優良事例を探し出して分析し、それを指標(ベンチマーク)に自社の活動を測定・評価して、変革を進める経営改善手法のことです。
「儲かってる会社をお手本にして自分の会社を改善していくぜ!」作戦のこと。

経営目的と経営目標の違い

経営目的・・・企業の将来像を抽象的、長期的に描くもの
経営目標・・・企業の将来像を具体的・短期的・定量的に描くもの